患部や自律神経が正常化しても、慢性症状として長年に渡って症状が続く原因は、脳の回路や体感地図そのものが変容している、もしくは過剰警戒アラームが消えない過剰反応によるが、そのメカニズムを示す3編の論文から紐解く。
1. 患部や自律神経が正常化しても、脳の過敏化(警戒アラーム)は解除されない
痛みの科学における金字塔と言える代表的研究です。
「中枢神経感作」という現象を解明し、末梢組織の傷や自律神経機能が正常に改善しても、脳の過敏な興奮によって「痛みの記憶(警戒アラーム)」だけがオフにならず痛みや不快感が残り続けるメカニズムを提示しました。
Woolf, C. J. Central sensitization: Implications for the diagnosis and treatment of pain. Pain, 152(3 Suppl), S2-S15. 2011.
2. 筋肉や神経(ハード)が修復されても、脳内の身体地図(ソフト)は歪んだまま残る
慢性症状を抱える患者の一次体感野(S1野)における「脳内の身体地図」に歪みが生じていることを実証しました。基礎体力や筋肉、自律神経機能といった「ハードウェア」が改善しても、大脳皮質の「ソフトウェア(身体地図)」を書き換えるには時間と客観的データの可視化による認識修正が不可欠であることを示しています。
Wand, B. M., et al. Cortical changes and chronic low back pain: current state of the art. Clinical Journal of Pain, 27(1), 86-93. 2011.
3. 脳の警戒回路が変化するため、客観データの「視覚的フィードバック」による再学習が必要である
中枢神経が過敏化・脳の興奮状態では、不安を司る扁桃体と思考を司る前頭前野のネットワークが変容し、生理的数値が改善しても不調のアラームが消えなくなることを解明しました。
この固定化した警戒アラームを解除(脳の再学習)するには、客観的数値を「視覚的フィードバック(バイオフィードバック)」として脳に入力することが有効であると実証しています。
皆さんが画像を確認しながら深呼吸を練習している理由がご理解いただけたと思います。
Edwards, R. R., et al. Patient mechanisms and symptom perception in chronic pain conditions. The Journal of Pain, 17(9 Suppl), T70-T92. 2016.
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