こうした反応の裏では、感情を処理する「心」の脳回路と、体温や血圧などの循環をコントロールする「身体」の神経回路が密接に連携しています。これが、いわゆる「心身相関」の仕組みです。
1. 「心」と「身体」をつなぐ神経のルート
近年の研究により、「心」と「身体」の神経回路を結ぶ具体的なルートが解明されてきました。それが、「内側前頭前野腹側部(ないそくぜんとうぜんやふくそくぶ) ➔ 視床下部背内側部(ししょうかぶはいないそくぶ) ➔ 延髄吻側縫線核(えんずいふんそくほうせんかく)」という神経回路です。
実験で動物にさまざまなストレス(拘束ストレスや電気ショックなど)を与えて解析したところ、ストレスの種類によって脳の働き方のパターンがガラリと変わることが分かっています。つまり、私たちが受けるストレスの「質」によって、心身をコントロールする脳のスイッチが切り替わっているのです。
2. ストレスの状況によって「血圧や体温」の反応が変わる
興味深いことに、ストレスに対する身体の反応は、そのとき置かれた状況によって真逆の反応を示します。
逃げられない抑圧された状況(拘束ストレスなど)では、体温や血圧が低下する反応が起きます。
一方、過酷な状況に必死に抵抗し、もがき苦しむような状況では、交感神経が激しく興奮し、血圧や心拍数が急上昇します。
ストレスの信号は、大脳辺縁系から視床下部、そして延髄を通り、下行性(脳から身体へ向かう神経)のルートを通じて全身の交感神経を刺激しているのです。
3. ストレスは免疫系や病気のリスクにも影響する
こうした脳からの交感神経の興奮は、血圧や体温のコントロールにとどまらず、免疫システムにも大きな影響を与えます。
人間の免疫細胞にはアドレナリンを受容するアンテナ(受容体)が存在するため、脳から発せられる交感神経の信号によって免疫の働きが変化してしまうのです。実際、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などの患者様では、自己免疫疾患を発症するリスクが高まることも報告されています。
まとめ
「気持ちの問題」と思われがちな心のストレスは、決して脳の中だけで完結しているわけではありません。それは確実な神経回路を通って身体へ伝わり、血圧、心拍、さらには免疫機能にまでダイレクトな影響を及ぼしています。
慢性的な不調や原因不明の症状の背景には、こうした脳と自律神経の過剰な興奮ループが隠されているのです。
(引用・参考:片岡直也 名古屋大学大学院医学系研究室 統合生理学)
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