全国から、医療機関の検査では「異常なし」と診断されながらも、長年苦しい慢性症状や自律神経失調に苦しむ方々が当院を訪れます。その中には、飛行機や新幹線を使って来院される方も少なくありません。
しかし、初診時のカウンセリングや検査の過程で、患者さんの口から非常に頻繁に発せられる言葉があります。それが、「先生、確実に治る保証があるなら、毎日でも通います」 という言葉です。
一見すると、熱心に通院する意思があるように聞こえるこの言葉の裏には、実は「自分は何の努力もしない代わりに、あなたが責任を持って私を治してくれ」という、完全な他力本願(受け身)の依存心理が隠されています。
感染症の様に原因が明確で、標準治療の薬物治療で明確な改善・回復が見込まれる病気とは異なり、現代の脳科学において、この「治してもらおう」という依存心を持ったままでは、いかに高度な検査や刺激を与えても、慢性症状の根源である「脳の過剰興奮と自律神経の機能低下」を克服することはできません。
本稿では、実際の臨床例を交えながら、「保証を求める脳のメカニズム」と、改善に必要な「自発的動機付け」の重要性を紐解きます。
実際の臨床例:78歳男性・11年続く筋痙攣の挫折と境界線
ここで、当院に寄せられた実際の症例をご紹介します。
【症例:78歳男性・心臓術後の慢性疼痛】
開胸手術を2回経験し、大動脈弁狭窄症術後から11年間、首から左腕、背部、臀部にかけての激しい筋痙攣と痛みに苦しんでいる症例です。横になっている時は症状が出ないものの、座位や立位姿勢をとると筋痙攣が起きて強い痛みになり、増悪の一途をたどってきたといいます。11年も継続する痛みにいら立ちを隠せず、認知機能の低下から怒りっぽい性格が形成されているようにも推察されます。仕事が社長業なので、組織の上の立場からご苦労もあることもお察しします。
心臓専門医からは「心臓に異常はない」と言われ、心療内科を紹介されての薬を処方されるも効果なし。どこに行っても治らないと絶望し、当院へ来院されました。
検査の結果、脳の興奮も数値には異常なく、自律神経機能の低下(臥位心拍数76bpm)が確認されました。さらに、一人で階段も自力で降りられないほどの基礎体力の低下が認められました
本人は「治るなら毎日でも来る!」と訴えましたが、詳しくヒアリングすると、「自分では日常生活の運動や生活習慣の改善を努力せず、ただ施術だけで治してほしい」という完全な受け身の姿勢であることが判明しました。
初回の検査・施術後に、私は付き添いのマネージャーに電話連絡をし、「この方の筋緊張や痙攣を弛緩させるには、施術だけでなく、ご本人が基礎体力を上げ、脳と自律神経を再教育する生活上の努力が不可欠です。毎日ご自身でやることも指導しますので、それを承知で本人が『自分の意志で治したい』と腹をくくるなら引き受けます。しかし、完全に受け身で『治してくれ』というならお断りします」と厳しく伝えました。結果として、その後は返事はありません。
この症例が示すものは何でしょうか。それは、「痛みを何とかしてほしいと叫びながらも、自分の脳と身体を変えるための『行動変容(エネルギーの投入)』を拒絶する脳の防衛反応」です。
なぜ「保証があれば」と言う脳は変わらないのか?
1. 脳の「エネルギー節約バイアス」と現状維持
脳は、人間の体重のわずか2%ほどの重さでありながら、全身のエネルギーの約20%を消費する巨大な器官です。
そのため、脳は本能的に「新しいことを学ぶ」「生活習慣や思考の癖を変える」といった、多大なエネルギーを必要とする変化を極度に嫌います。
「治す保証をくれ(=自分が傷ついたり努力したりするリスクをゼロにしてくれ)」と要求する脳は、「自分で責任を負わず、誰かに依存することでエネルギー消費を最小限に抑えようとする現状維持バイアス」の罠に陥っています。
2. 「ボトムアップ刺激」の限界
一般的な鍼灸院・整骨院や整体、マッサージ、あるいは鍼灸において、外部から物理的な刺激を加えることは、末梢の受容器から中枢へ信号を送る「ボトムアップの介入」となります。
これらは一時的な筋肉の緊張緩和や、脊髄・脳幹レベルでの反射的修飾(体性-自律神経反射や下行性疼痛抑制系)には有効です。
しかし、78歳男性の症例のように、11年間もの間、脳の深部に「座位・立位=痛み・痙攣が起きる」という強固な予測エラーや恐怖記憶のループが刻み込まれている場合、外部から受動的にマッサージや鍼を施すだけでは、脳の回路(可塑性)を書き換えることは絶対にできません。脳は「これは外から勝手に入ってきた一時的な刺激だ」と処理し、ベッドから起き上がった瞬間に、元の異常な筋緊張回路を即座に再起動させてしまいます。
45歳女性看護師の症例:自ら動く者だけが掴む回復
一方で、同じように長年の首や肩の痛みに苦しみながらも、結果を出す人の特徴は対極にあります。
【症例:45歳女性・看護師のケース】
日頃から医療現場に身を置きながら、日常生活・社会生活には支障が無いモノの、長年の首から肩の重だるい症状に悩まされていた看護師。
初診時の検査とカウンセリングの後、単なる施術の受け売りではなく、「日頃の手入れとしての適切な運動と、脳波・心拍変動に基づいた深呼吸の指導」を提示しました。原因は明確な基礎体力低下であって、三塚らも腹筋は無いと自覚していました。
基礎体力低下から、首肩のだるさが取れない元が確認できましたので、無理のない、日常生活・社会生活に支障のない、症状良好を維持できるプログラムは作成できますがどうしますか?ここで、軽い運動からストレッチをしたら明らかな症状の軽減が体験できましたね。これを維持体力増進することによる再発予防も可能ですがどうしますか?
回答は「ちょっと様子をみます」と、再来はありませんでした。自分での努力の仕方を効率良く無駄な努力にならない手法を伝授するつもりでしたが、受け身的に何かをしてもらって改善したいように聞こえました。
彼女は看護師なので「自分が主体となって脳と自律神経を整えなければ変わらない」と即座に理解し、日常生活の中で指導された運動と呼吸の習慣化が重要だと認識しながらも、自分から改善して行こうとする自発的動機付けが足らない方でした。
このケースも、「他力本願という扉を閉め、自らの意志で行動変容(アクティブ・ラーニング)を起こすかどうか」の1点が、早期の改善・回復・症状良好を維持できるかの境目だということです。
結論:主体性なきところに脳の根本的変化なし
「治る保証があれば毎日来ます」という言葉の裏にあるのは、不調の苦しみから逃れたいという焦燥感と同時に、「自分の生活や脳の使い方は変えたくない」という甘えと依存です。
医療機関の検査で異常がない慢性症状を根本から改善し、症状良好な状態を長期にわたって維持するためには、以下のプロセスが不可欠です。
1.現状の可視化:
脳波・心筋・呼吸・体力測定により、自分の心身がどう機能低下しているかを客観的なデータとして受け入れる。
2.主体の移行:
「施術者に治してもらう客体」から「自らの意志と行動で脳回路を書き換える実践者」へとパラダイムシフトを起こす。
3.行動変容の継続:
日常生活における呼吸、運動、生活習慣の修正を自発的に継続する。
「様子を見ます」と足踏みを続け、他力本願のまま時間をつぶすことは、自ら慢性症状の牢獄に鍵をかけ続ける行為にほかなりません。
当院は、マジックや気休めの施術を提供する場所ではありません。ご自身の意志で脳と身体を立て直す覚悟を持った方に対し、最高峰の科学的知見と検査・刺激をもって伴走する唯一無二の専門機関です。真に人生と体を変えたいと望む方のご来院を、心よりお待ちしております。
全国の遠方から来院する方が増えてきました。
当院の医科学的アプローチを求め、全国(北海道・岩手・大阪・鹿児島など)から飛行機や新幹線で来院される方や、片道2時間前後をかけて通われる方(甲府・木更津・市川市・成田・鎌倉など)もいます。
毎週の通院が難しい遠方の方でも、集中して脳と自律神経をリセットできるよう、2つの短期集中プログラムもご用意いたしました。
ご自身の地域やスケジュールに合わせ、下記の特設ページより詳細をご覧ください。